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塾長ダイアリー「大きなプライド 小さなプライド」

  …塾長として長いキャリアの中で、思ったこと・学んだことを綴ります…

 

もうかなり前の話。  6月ごろだったかな。

大学を目指して勉強をしたいので、教えてくれる塾を探している、という電話を受けました。

高校3年生の男子とそのお母様とあってお話しをききました。

志望大学を聞くと、O大学、とのこと。

道内の国立大学の名門か。

最近の学力状況がわかるものを持ってきて、と伝えてあったので、

返ってきたばかりのマーク模試の成績表を見せてもらいました。

 

え!?

英語が・・・、200点満点中、20点じゃないか。

 

正解率10%か。

マークをまったく適当にぬっても、確率的にもっととれるんじゃないのか?

と、正直思ったわけです。

 

他の科目もまあ似たりよったりで、O大学の合格は、地平線のはるかかなたにあるように思えました。

でも生徒本人から非常にやる気を感じとれたので、お預かりすることにしたました。

 

ただし、O大学合格は保証できません。 非常に難しいと思います。

 

と、いうことはあらかじめ断っておきました。

そんなに簡単なことではないことが明らかだったからです。

 

できるだけのことはやる。

でも、道内の私立大学になんとか合格できれば、上出来じゃないかなあ。

 

正直そう思っていました。

 

まず試しに、高校入試の英語の過去問を解いてもらったのですが、

たしか、60点中30点台だったかな。

 

「あのね、正直言うと、中学英語も穴だらけだよ。

 高校英語の取り組みのほかに、塾の中3の英語の授業に出たほうがいい。どうだい?」

 

このように言いました。

 

この生徒がなんと言うだろうか。

 

そんなのいやです。 かっこ悪い。 

何で中学生に混じって授業を受けなくちゃいけないの?

 

そういうんじゃないかな、と思いました。

 

何せその中3のクラスには、その生徒の妹がいて、

さらに、その時点で妹のほうが英語ができていたのです。

(妹は中3の秋に英検準2級を取った)

これは、中3クラスには来づらいだろうな。

 

ところが、その生徒は、こう言いました。

 

 彼「わかりました。基礎を勉強できる機会ですから、僕のほうからお願いしたいくらいです。」

 

中学生といっしょに授業を受けることは恥ずかしくないかい?

いやじゃないかい?  しかも、妹もいるけど?

 

 彼「そんなのどうでもいいことです。

  大事なのは志望校に合格することですから。」

 

このような経緯でしばらくの間、彼は中3の英語の授業に出ていた。

 

秋から彼の飛躍が始まりました。

Duo3.0という、レベルの高い英単語熟語集を暗記させても、どんどん吸収していく。

 (この本の表紙には、英検準1級レベル、と書いてある。)

 

さらに、数学は青チャートの問題もかなり解けるようになっていきました。

  

秋が深まってくるころには、模試では英語が一番の得点源になったといっていました。

8割くらいとれるようになっていたのかな。

 

結局、この生徒は、見事にO大学に合格しました。

 

僕の教えたことなんて、ほんのちょっと、です。

もともと高い能力を持った生徒が、本気になったとき、覚醒が起こったのでしょう。

ただ、この奇跡も、彼の心の持ち方によって引き起こされたのだと思います。

 

大きな目標、夢に向かって突き進むことをやめない。

それが、大きなプライド。

どうでもいいことに対して、他人の目を気にしてしまう。

それは、小さなプライド。

 

そんなどうでもいいプライドなんて、くるくると丸めて、ゴミ箱に捨てればいいんだな?

生徒から教わることって、結構あるものです。